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セルフライナーノーツ Vol.12

Disorder Circulation編 (4)

サークル過渡期から末期編。1リリースのトラック数が減ってきたので、分割予定だったが一気に書き切ることにする。

ON BREAK (2011)

コンセプトレスに戻ったインタルードなEP作品。

この頃からただでさえ少なかったオフィシャルからのテキストによる発信は減り、かろうじて生き残っていたごく僅かなリスナーからは最早世捨て人みたいな扱いをされ始めていた。この頃から何故か時折ロシアの方からメールを頂いたり次の新作はまだかといったリプライを頂くことが起きる。

1. Virgilia

いつものようでいつものでない、なんとも形容し難い雰囲気の4つ打ち。今までよりは主張しているし、かといってこれまでの路線を捨てているわけでもなく。結果論かもしれないがアルバムの形態を取っていたら他の楽曲との整合性が取れなくなる気がするので、EPで単発リリースしていたのは今となっては正解だったかもしれない。当時はそこまで考えてはいなかったとは思うが。

ドロップ直前のフィルのたった1小節は今でもよく思いついたなと思う。

biporalized (2013)

商業作品の劇伴などの仕事に追われていたりなどであまり活動できなかった2012年を経て、2年ぶりにリリースした作品。

この頃にようやくちゃんとしたロゴを作った。

2. The Garden of Lilies

恒例の低速ブレイクビーツ曲。4+3/4拍子というちょっと変則的な拍子であること以外は割と素直な曲。少し前作から時間は空いたものの、特に迷わず作れていたと思う。ネガティブ感は以前にも増して悪化しているが、プライベートで何一つ良いことがなければそりゃこうもなるだろう。

姉妹作に「The Garden of Halcyon」がある。こちらも4+3/4拍子。

4. false

普段よりは若干BPMの上がった(といっても120〜130のレンジだが)プログレッシブハウスよりの4つ打ち。この頃から良くも悪くも手癖で曲を書いていて、その上で素の自分以上に「このサークルのCzkというアーティストらしさ」という謎の空想に捕らわれていた節もあって、曲を書くのが面白くないわけではないけど若干の苦しさも少し覚え始めた頃。要するに周りからの評価を意識してしまっていて、「何か違うね」と思われるのを非常に恐れていたように思うが、やっつけでない形で曲をアウトプット出来ていたことでぎりぎり踏みとどまっていた。

falseという題ではあるが、主題としては「嘘」、それも「真実を知らないほうが良い結果である可能性の高い嘘」という相変わらずの厨二モチーフ。

6. truth

falseよりもプログレッシブハウス色の強いテクノトラック。

前述の通り言うならば「アーティスト病」みたいなのに苛まれつつも、ここで手を抜いたら本当に終わると思って出せるものは出して書いたプログレッシブなトラック。このネタに近しいこと前にやったよな、というのは一切気にしないようにしたし、次に温存しておくような出し惜しみも辞めた。本当に当時メンタル面では最悪だったと思われるが、振り切ったおかげで曲の出来としては概ね満足しているし、ウキウキなメンタルで書けるような曲でもないものを出せたのは慰めにもなった。

タイトルは最早考える気力がなかったようにしか思えないが、一応「嘘より性質の悪い真実」がモチーフのfalseのアンサーソングではある。

Punctuated Equilibrium (2014)

カタログナンバー9作目。

表題は「断続平衡説」という生物進化学の理論名から。アルバム名はその都度思いついた人がつけているが、このインテリ感溢れる感じはほぼ私でなくgrayが考案しているパターン。ちなみにこのライナーノーツを書くまでBandcampでの登録名称をタイポっていたことに気づいていなかったので、こんなところでも学のなさを露呈している。

3. reset

新境地その1。前作のメンタル暗黒期を脱して、フラットに曲作りに取り掛かった所老舗テクノレーベルのDrumcodeからの影響がほんのり見られるような少しDOPEよりのテクノトラック。ベースの抑揚がこれまでの曲と比べると大分キツく、旋律も非常に抽象的になっているが、パッドの進行は相変わらず感もあり、新たな取っ掛かりを得たように思う。

今まで全然気にしてなくて適当につけたタイトルだと思っていたが、直前のメンタル状況から考えると本当に率直なタイトルだったんだなと改めて思った。

5. multiverse

新境地その2。無機質で低速過ぎないテクノブレイクビーツ。これまでの音使いから一変しているが極端すぎて逆に面白い。これまでreFXのNexus2とSpectrasonicsのOmnisphereをメインにした曲が多かったが、あまり活用出来ていなかったNative InstrumentsのMassiveをちゃんと使い始めたことに依る所が大きいかもしれないが、曲に対する視点が確実に変わったのを感じる。

リファレンスというわけではないが、元々はUnderworldの「Pearl’s Girl / Tin There」のように、表と裏みたいな形で2曲作るつもりだった記憶があるので、実現していれば裏バージョンとなるものはもっとスタンダードなテクノトラックになっていたと思われる。

また音の使い方から察するに、本曲の対のパターンは旧スクウェア時代に発売されたシューティングゲーム「アインハンダー」の6面BGM「焦燥 Impatience」のイメージもあったのだろう。

Metaphysical Poetry (2014)

カタログナンバー10作目にして、現時点では最終作。読んで字の如く「形而上詩」を意味する。

お互いライフステージも変わったりで中々これまでのような活動はもう難しいと思われるが、またやりたいという気持ちは少なからずあるので活動終了宣言はしないままにしてある。

1. immaculate

よりDrumcode方面からの影響が大きくなり、インダストリアル色の強くなったテクノ(しかしBPMは早くならなかった)。準レギュラーとしてDJ出演していたイベントでの転用を見据えていたような気もするが、その割にはダンサブルかと言われるとそうでもないのでやっぱりただの趣味に突っ走っただけのようだ。

元々の仮タイトルは「pitfall」であり、grayが出してきた曲も偶然にも同一の仮題がついていて、あちらがよりタイトルに合致していた曲だと思われたためにこちらのタイトルを差し替えた。その結果「無垢」にあたる単語をタイトルにしている割に、曲調が合致している気がしないが、感覚遮断実験などで登場する所謂「白い部屋」を後付けながらモチーフにしていたと思われる。

5. degenerated humanity

少しご無沙汰だった、言うならば「いつもの」なダウナーテクノナンバー。決して明るいとは言えないものの、ネガティブ感は和らいでおり、これまでの浸るようなアトモスフェリック感を上手く協和出来ているのではないかと思う。深めのリバーブでの空間演出や禁欲的なコード展開、ブレイクでのリードギターなど、大衆ウケを気にせずにやりたいことをやれるだけやった上でとっちらかずにまとめられていたのは自惚れかもしれないが大分頑張っていたのではないだろうか。

少なくとも当時の自分に取ってはこの曲を書いたことで理想としていた到達点に手が届いたような感触があり、後付けかもしれないがこれまでの楽曲制作活動の集大成とも言える曲だったかもしれない。

タイトルは「人間性の衰退」を意味する。こういう変に達観ぶったタイトルをつけているから世捨て人みたいな扱いをされるのだとついぞ気づくことはなかった。


というわけで、表立った音楽活動はここで一旦一区切りである。いくつか割愛した曲もあれど、大体の曲については記載出来たかなと思うので、色々整理がつけられて良い機会だった。

割といつも夜中のテンションで書いていたので文章力のなさも相まって読みづらい所も多かったと思うが、何か1つでも刺さるものがあったならば幸いである。お疲れ様でした。