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セルフライナーノーツ Vol.8

Disorder Circulation編 (2)

QY70時代の鬱憤を晴らすかのように曲をアウトプットしまくっている。1曲に対して書くことが増えたのは以前と比べると勢いだけで曲を書くのではなく多少なりとも考えてやっていることの表れかもしれない。

Autoconceptualization (2009)

3作目。テクノ色よりもアンビエント色が強まってきたことでより浸るといった側面が強調されて、ただでさえ少ないリスナーを突き放しにかかり始めた。

個人でMisskeyのフォークであるSharkeyのインスタンスを持っているが、インスタンス名はこの作品から来ている。ジャケットの表記やインスタンスのサブドメインに用いているa19nというのも本作のヌメロニムで、もっと言えばタイトルを長ったらしくしてヌメロニムにするという発想はアークシステムワークス作の怪作ギャルゲー「Prismaticallization」から来ているクソオタクムーブである。

ジャケットのイメージとしては完全にBTの「ESCM」オマージュ。力量不足で表現出来ず割愛したモノリスについては、抽象的な表現で誤魔化して弊インスタンスのアイコンとなっているというどうでもいい余談である。

2. Horizon

それ以上でもそれ以下でもなく、地平線。

コードを展開しないというか一貫して単一のコードで曲を完走するということと、ピンポンディレイをより効果的に使えないかということを試みた。ブライアン・イーノが「Music for Airport」で用いていたローファイなピアノの影響が見られる。

4. All Resources of the Nature

Lost Moonに続く、7分弱しかない短い低速ブレイクビーツ。BT大先生がStutter Editをリリースしたのを購入したので、それの実践投入も兼ねていた。制御しきれず音の出方が不安定なところに面白みを感じて敢えてそのままにしてある。基本的には4つ打ち曲がないと息が出来ないタイプの人間だが、この低BPMとネガティブに徹したブレイクビーツシリーズはそれとは別軸で自身の中では結構大事なポジションと位置づけていたように思う。

6. if

問題作。

自身の最短タイトル文字数であると同時に最長演奏時間を保持する曲になった。曲自体は割と真っ当(?)なプログレッシブハウスだが、如何せん14分超えは今考えてもあまり正気ではない。これでも16小節ごとに完全に同一ループにならないよう変化をつけながら進行しているので、闇雲に演奏時間を伸ばしたというわけでもない。

リファレンスというほどではなかったにせよ、Sashaが1996年にVinylリリースした「Arkham Asylum」が12分程度で同じくパッドメインによる焦らす進行をしている曲があったことは、少なからず影響があったというか、「こういうことやっても許されるな」という免罪符になっていた側面は否めない。同曲は拙作と比べるとよりテッキーでストイックな側面が強かったため、よりメロディアス志向で自身のカラーに落とし込むということにはある程度成功していたように感じる。そこまで考えてやっていたかどうかは怪しい所ではあるが。

バックグラウンドストーリーとしては「とある選択を誤った少年が夢想した『if』の世界そのもの」ということを当時のWebにも書いたような記憶がある。

8. Vanishing

ビートレスという制約を設けた楽曲をイントロ曲とアウトロ曲として入れる、というお題があったのをレギュレーション違反しまくって出来た産物。ビートレスどころかリズムループを32分でスライスして主軸として構成しているので、対極的な所にある。結局イントロにもアウトロにも使えず、この位置に収まった。ループを刻んで暴れさせるというのはリッジレーサーVの「Gammon」で学んだ手法だったと思うが、秩序を保って綺麗に暴れるということの難しさを思い知った。

これにも一応バックグラウンドストーリーがあったものの、「ゴミ箱に消しちゃいけないファイルがあったのを失念したまま空にした」というしょうもない感じ。あまりにも下らない。

limen (2009)

4作目。2009年は二次創作プロジェクトも立ち上げたことで、本作で3作品目のリリースとなる。春M3、夏コミケ、そして今回の秋M3とリリース感覚が短すぎて1曲にかけられる時間が大分限られてしまう状況になってきたので、曲数を減らしてでもクオリティは落とさない方針となったため4曲のミニアルバムになった。

ジャケットはまだESCMのフォーマットに沿っている。この時は今後このフォーマットでリリースし続けようかなとも考えていたような気がする。

2. foreshadow

少しメロディアスな側面が強い作品が続いたので、シックな感じにしたかった。パーカッションの使い方が定型化しかかってきていた自覚はあったので、サンプリングCDのあまり使っていないところを活用していつものパターンを崩しにかかったように思う。コードを展開しなかったのは意図的だったかどうかは記憶にないが、今聴き直している感じでは意識して移調しなかったのだろう。

4. The Midnight Sun

本作の象徴という位置づけ。かつてトランス沼にいた名残を遺憾なく発揮しつつ、いつものBPM120帯のテクノに落とし込んでいる。奇をてらうようなことはしなかったもののそれ故に地力が出ることになったが、結果としては全体の世界観や曲構成等々で比較的成功していたのではないかと思う。

前半のループはコード展開せず、ブレイク明けからコードを動かす手法が大分自分にあっているように感じて、それが自身の曲で定着しつつあることはマンネリ化よりも自身の特色化として歓迎できていたように思う。そのこともあってか曲の展開について悩むことが大分減ってきていたので、取っ掛かりを掴んでしまえば楽曲制作自体にあまり時間をかけずに済むようになり、引き換えに思わせぶりなタイトルをつけるのに楽曲制作の数倍の時間を要するようになっていった。モチーフやバックグラウンドストーリーを設定するようになったのはそれの対策だったのだろう。

この曲は表題の通り見たこともないくせに「白夜」をモチーフとしているが、実際の所は白夜現象そのものよりも自身の常識に反する超常現象に対する困惑感、不安感や焦燥感をテーマとしていたような記憶があるので、必ずしも白夜である必要はなかった。ただ感情という定量的でないものをモチーフとして定めると(ただでさえ伝わらない曲を作っている自覚はあったので)あまりにも伝わらないので、共通言語化としては都合が良かったというところか。


コンスタントにリリースを重ねていたこともあってか、「知る人ぞ知る隠れたサークル」くらいの立ち位置になりつつあった頃。それなりなものをアウトプット出来ている自負もあったことで少し天狗になりつつあったのは良くなかったなと後に猛省した。