時系列的にはこのあたりなので、2次創作関連についても書く。
「Ruxia」設立
「Ruxia」はDisorder Circulationの両名と、同じく高校時代からの知人のイラストレータである八尋からなる二次創作を専門とするレーベルとして2009年に設立。頒布作品のジャケットにイラストを入れたくも絵心もなければ伝手もなく外注するコミュ能力もない我々に、イラストの活動の幅を広げる場を模索していた八尋が合流する形となった。サークル命名も八尋によるもの。
ゆくゆくは東方の二次創作以外も視野には入れていたが、サークル活動としては東方アレンジを4作リリースするに留まった。活動していた時期が丁度HDDクラッシュの時期と重なっているため、当時の制作データはほとんど手元に残っていない。頒布物もいつものスリムケースからジュエルケースになり、帯やリアジャケットなども入りキャラメル包装をした普段よりリッチな頒布物だったが、頒布価格は値段を理由に聞いてもらえないというのは本位ではなかったので、意地でも500円からは変えなかった。
活動スタンス
この頃は東方アレンジともなると既に一大ジャンルである。そんな中東方に参入しようとしたところで、何かしらのカラーがなければ普段以上に埋没するだけであることは明白だったので、例によって例の如く「流行りの音楽は周囲がやっているから、カウンターとなる立ち位置でいよう」というスタンスであった。原曲を採譜したものにクラブ音楽のトラックを載せたものは既に世に溢れかえっていたので、そこを我々がフォローしても存在価値がないな、という判断に依る。
とはいえ東方シリーズの原曲というものは、軒並み原曲のフレーズがかなり主張が強い。偉そうなことを言った手前どうしていくのか、非常に頭を悩ませることとなる。
Astrometry (2009)
あの「Disorder Circulation」が東方をやる、という2、3人くらいはいたかもしれない界隈をざわつかせたデビュー作。普段スリムケースでのジャケットデータしか作ったことがなかったためジュエルケースでのデザイン入稿データの作成に失敗し、ジャケットと地続きだった帯が盛大にずれるという事故を起こしたため帯上に表紙の続き絵をレイアウトするのは禁止になった。
1. Hundred Million Night Hours
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東方アレンジということで食いついてくれた初見さんをいきなり突き放しにかかる、永夜抄タイトル画面曲の低速アンビエント・テクノ。原曲の中の1フレーズのみを抽出してループ化し、自分のカラーの曲に織り込むというアプローチでのアレンジをしたが、この手法に割と手応えを感じたので以降のアレンジもこのスタイルがベースとなる。示し合わせたわけではなかったが、相方のgrayも概ね似たような答えにたどり着いたようで、音楽性については相変わらずほぼ相談することなく進行した。
表紙買いをしてしまったリスナーの大半を後悔させるも、一部の奇特な人には今までの東方アレンジにはないものとして受け取って頂けたようで、特に当時付き合いのあった音楽繋がりからは媚びずに普段の路線を貫いたという点において割と評価してもらえていたように思う。
タイトルはHiroshi Watanabeの変名義であるKaitoの「Hundred Million Light Years」が元ネタ。
3. Eyes of Entreating
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更にネガティブ志向を強くしたアレンジ。ここまでやると言われない限り東方アレンジとすら伝わらなくなる。
7. Star Fall Sunset
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少し日和って原曲が分かる程度のアレンジも入れておくか…と思いイビザ調のハウストラックアレンジを入れた。世間的にイメージされる東方アレンジはどちらかというとこちらに近いと思うが、本作ではこの曲がいること自体は結構なイレギュラーである。
特にリファレンスがあったわけではないが、全体的にSpringTube Recordsのハウストラックをよく聞いていた頃だったかもしれない。
9. Phantasmagoria 5am
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プリズムリバー3姉妹をモチーフにしつつ別の曲も混在しているハイブリッドなトランスアレンジ。
原曲表示は2曲でクレジットしているが、この曲は元ネタが3曲あるということは当時からも開示していた。ほとんどエゴサをすることもなかったので3曲目が伝わっていたかどうかは定かではなかったが、このYoutube動画のコメント欄にも気づいた人がコメントを残してくれているように3曲目はTiestoの「Suburban Train」である。結構古めの曲だが、古くからトランスを聞いている人ならば気づいてくれるだろうという淡い期待はしていたので、無事気づいてくれる人がいたということが分かったことで苦労が報われたように感じる。ついでに言えば曲名も同じくTiestoの「Dallas 4pm」から来ていて、これもヒントのつもりだった。
この手法は実は先駆者がいて、それこそ東方アレンジを代表するような著名サークルのAlstroemeria Records主宰であるMasayoshi Minoshimaが既にやっていて、「Scolded By The Princess」がそれ。こちらは遥かに再現度も高い。
元ネタはCara Dillon vs 2Devineの「Black is the Colour (Above & Beyond’s Devine Intervention Remix)」という激長タイトルの曲と思われる。若干選曲がマニアックな気もするので、beatportで日常的にトランスを聴き漁っているような人以外はあまり気づかなかったのか、この2曲の関連性に言及している場面を目にしたことはない。
Flower, Sun, and Moon (2010)
東方アレンジ2作目。前作はまだ僅かながら東方アレンジ界隈に寄り添う姿勢も垣間見られたが、それも完全になくなり趣味に振り切るようになった。ゲスト作品としてKPD Recordsのkanabunの曲を収録している。
アルバム名はグラスホッパー・マニファクチュアがPlayStation2で発表したアドベンチャーゲーム「花と太陽と雨と」をもじっている。須田剛一作品ということで、これまた何とも万人受けしないタイトルであったが、私個人としては結構気に入ったタイトルだった。
2. Hollow Earth Theory
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勇ましかった原曲のタイトル画面BGMであるが、残念ながらローテンションな低速4つ打ちテクノと化した。全体的にローファイな質感にしたのは、地霊殿の雰囲気のイメージに引っ張られていてアンダーグラウンド感を出そうとしていた形跡だろう。今聞き返しても色々と自分の中からは出てこなさそうなフレーズが多いような気がするが、どこから着想していたのかが全然記憶にない。後ろでさり気なく鳴っているギターのフレーズなどは完全に自分の引き出し外なように思えてならないので少しもやもやする。
曲名は「地球空洞説」に由来する。
6. Sleeping Satellite
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クラッシュシンバルとスネアロールを廃して、ひたすらダウナーなテクノにした。曲調は大分様変わりしているが、フレーズの引用率は他の曲よりも遥かに高いので、Ruxia作品の中ではまだ原曲の面影があるほうではないかと思う。振り子のようにパンを振る電子音は、鈴仙が作中で使用するスペルカード『波符「赤眼催眠」』に着目した催眠術の表現。とにかく淡々と音を刻んで、衛星の周回している感じと夜の静かな狂気感を出すという狙いがあった。
タイトルはMasayoshi Minoshimaがかつて主宰していたDownForce Recordsから発表されていたFAITHに収録されている愛新覚羅溥儀氏の変名義曲「judithz a.k.a. process 2.3.1 - 眠る水槽」から来ているのと、
- 催眠→一種の昏睡状態
- 鈴仙→永遠亭→月→衛星
という連想ゲームの結果のダブルミーニングである。何だか東方オタクっぽくて良い。
それに並んでAurora feat. Naimee Coleman(DDRerにはOrdinary Worldの人といえば伝わるかもしれない)の「Sleeping Satellite」ともかけている。
東方関連にしばらく触れていなかったため久々過ぎてパッとマインドシェイカーの名前が出てこず、あのスペカ何だったっけ?と思って「鈴仙 催眠」でぐぐったらスケベコンテンツしか出てこなかった。そりゃそうだな、私が悪かったよ。