概要
「オクトパストラベラー」は2018年にスクウェア・エニックスからNintendo Switch用に発売されたRPGタイトル。ハイエンド化が進む近年のRPGから一転して、「新規IP」「キャラクターは2D描写」「背景は3D描写」という異色の組み合わせで「HD-2D」なるドット絵を3D空間に落とし込む技法で多彩な画面エフェクトを表現可能にし、古き良きJ-RPGを現代の技術で復刻させた意欲作。この試みは成功したと言ってよく、以降HD-2D作品として「トライアングル・ストラテジー」「オクトパストラベラーII」や、「ドラゴンクエストIII」リメイク版などにも応用されていくこととなる。
ビジュアルに関しては、動いているものを見たほうが早い。ドット絵大好きおじさんもニッコリである。
よく間違われるのだが、オクトパスはタコではなく、OCTO(8つ)+PATH(道筋)である。8人の主人公から一人を選び、ストーリーが進んでいくとまた任意の主人公に切り替えることが出来るオムニバスストーリー方式。キャラクターごとに固有のフィールドコマンドがある他、特定条件を満たしていくことで戦闘において使用可能なバトルジョブの解放・アビリティの付け替えなども行え、カスタマイズの幅も広い。
オールドスタイルなコマンド選択式バトルでありながらブーストとブレイク、弱点システムによって戦略性に幅を持たせているが、ゲームが進行するに伴い如何せんブレイクさせないとダメージが通らないことが増えてしまい、弱点探しが億劫に感じる場面もあった。それでもコマンドバトル自体稀有となってしまった昨今では、現代風に戦略性を盛り込むとこうなるであろう1つの形が示されていたかのように思う。
とまぁゲームの内容はさておき、本題は今作のサウンドトラックである。全編Spotifyなどで配信されており、アレンジアルバムも軒並み配信されているのは近代作品に置けるメリットの側面といえる。
本作は西木康智氏のセルフライナーノーツがNoteに公開されているので、気になった方はそちらも併せて参照されたい。
個別楽曲について
RPGというジャンル上、個人的にも最も重要視するのは通常戦闘曲であるが、本作は通常戦闘曲が3つあり、ストーリーの進行度によって使用される楽曲が変わる。本作はHD-2Dという古き良きJ-RPGを下地に現代風にアレンジされた作風であるが、BGMに関してもその傾向があり、オーケストラ+バンドの混合編成が随所に採用されている。旧スクウェア作品で言えば「ロマンシング・サガ」あたりに思い入れのある人であれば刺さるのではないだろうか。
バトル1
序盤で流れる通常戦闘曲。J-RPG感溢れるイントロで早速分からせに来る。このゲームは前述のように戦闘が少し長引く傾向にあり、特にアビリティに乏しい序盤は色々試行錯誤していると更に伸びる傾向にあったため、これでもかと出てくるストリングス隊が徐々にシールドが削れてきた感を出すのに非常にマッチしていたように思う。
バトル2
中盤の戦闘曲。あまり聞く時期は長くなかった。少し戦闘にもこなれてきて、どうしたらいいんだ感はだいぶ薄れてきた頃なので、それを計算されてか曲調にも少し余裕が感じられる。
バトル3
終盤の通常戦闘曲。更にバンド感が増し編成は豪華になる。このゲームはブレイクシステムのためか終盤になるとただでさえ長い通常戦闘も、アビリティの増加とともにターンごとに考えることが増えるのも相まって更に長くなるので余計に聞く機会が増える。似たようなフレーズを徐々に転調しながら執拗に繰り返すパートはシンプルながらバトルシステムともよくハマっているなと感じた。
ボスバトル2
ついでにボス曲も。1をすっ飛ばして2。ボスバトル1もそうだが、このゲームのボス戦は直前の会話シーンから曲が地続きで、戦闘シーンに入ったらこの曲にシームレスに繋がれるようになっており、演出面でもよく出来ている(自然過ぎて最初のうちは気づかなかったが)。これまた古典的なJ-RPGのボス曲を踏襲しつつ現代のVGMとして落とし込んである。イントロからしてメタルでいうところのクサい感じが凄いが、「ヤバい」感が強かったボスバトル1と対比となるような感じで「やるしかない」感が出ていてとても良かった。
追記
この作品の音楽に関して、ゲームさんぽで特集されていた回があった(存在を今日知った)。ゲストは作曲家の新垣隆氏。現役かつ国内トップクラスの作曲家による技法の解説があり非常に説明が丁寧で自分のテキストを読むより7億倍は分かりやすいので、興味があれば是非見てみてほしい。