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The Elder Scroll 4:Oblivion

エルダースクロールズシリーズと言われてもピンと来ないかもしれないが、「スカイリム」がこのシリーズのナンバリング5作目であり、「オブリビオン」はその前作にあたる4作目となる。Bethesda Gamesが2006年に発売した本作は、コテコテ王道ファンタジーな世界観を持つオープンワールドRPGであるが、そのコテコテっぷりは続編のスカイリムを遥かに凌ぐ。

国内でもPS3・XBOXでローカライズされたものが発売されたことで知名度があるが、オリジナルとなるPC版では日本語のサポートがない。日本語環境では有志の作成した日本語化Modに頼らざるを得ないような状況であったため、続編のスカイリムでは公式に日本語がサポートされたことは結構衝撃的であった(がこれ故に、Modを利用してのプレイは一筋縄ではいかなくなるのだが)。

キャラクターデザインは言葉を選ばずに言えばバタ臭い洋ゲー風味全開であるし、RPGの華である戦闘は国産RPGと比べると戦略性に乏しく、いちいちモーションもダサい。それでもこのゲームが流行ったのは、ゲーム内でのプレイヤーの行動に関してあまりにも自由度が高すぎること、尋常じゃない広さのワールドマップやゲーム内のNPC一人ひとりに人生が設定されており時間によって個々のキャラクターが生活をしているRadiant AIを始めとする世界の作り込みが凄まじかったこと、そしてゲームを自在に拡張するModの存在によって如何様にもカスタマイズが可能だった点にあるだろう。先に上げた日本語化Modから始まりゲームシステムからキャラクターをはじめとしたグラフィック、装備や魔法の追加など、公式にコンストラクションキットが提供されていることもありゲーム内で置き換えられないものはほぼないといって良い。ハードウェアが許す限りは文字通り何でも出来たのである。

発売からもうすぐ20年を迎える本作は流石に現行のタイトルと比較されてしまうと流石に立つ瀬がないが、当時としてはかなり美麗だった部類になる。続編のスカイリムと比べると風景のバリエーションにも飛んでおり、草木生い茂る草原から雪山まで多岐に渡るロケーションが用意されている。続編のスカイリムはストーリーの舞台が寒冷地であったこともあり、本作はオブリビオン次元などの存在もあってその差は顕著に感じられる。

劇伴はジェレミー・ソウルが全曲担当しており、全編フルオーケストラ楽曲が用意されている。楽曲の傾向としても良い意味で泥臭さのあるスカイリムと比べると、より王道ファンタジー色が強い。タイトル画面の「Reign of the Septims」からしてそうだが、とにかく純然たるファンタジーであろうとする意思が感じられる。ゲーム音楽というよりは映画音楽に近く、しかしバックグラウンドに徹するのではなく楽曲も立っているのでこの系統の音楽としてはかなり耳に残る。長い下水道でのキャラクターメイクを終えてから初めてフィールドに出た際に「King and Country」や「Wing of Kynareth」が流れたときは、「これから冒険が始まるんだなぁ」と思わせるには充分だったし、街に入り宿屋の暖炉の火に照らされながら聞く「Harvest Dawn」は格別であった。

本作の特徴としては、特定のシーン専用のBGMというものは存在せず、RPGというゲームのジャンルとしてはかなり思い切ったサウンドデザインになっている。タイトル画面とゲームオーバー以外の楽曲は全てシーンカテゴリに振り分けられた楽曲がランダムに流れる方式であり、その分類もフィールド・町中・戦闘・ダンジョンと至ってシンプルである。しかしそれ故に「ゲーム中一度しか訪れないがためにそこの楽曲を聞く機会が全然ない」ということは起こらず、どの楽曲も遊んでいるうちは等しく聞く機会がある。単にシーンごとに特定のBGMを発注・アサインする労力をカットしたという側面もあるかもしれないが、それでも本作においては効果的に機能していたように思う。個人的にはスカイリムよりも楽曲面ではオブリビオンのほうが非常にまとまりが良かったと思っている。

ゲーム音楽としては異例なサウンドデザインであるためゲーム音楽と言われると難しい面もあるのだが、流れる状況が無数に存在する中でどれが流れても違和感がないのは素晴らしい。曲数も近年の作品と比べると大分絞られているが、その分どの楽曲も捨てるところがないものが取り揃えられており、本作も小難しい蘊蓄なく楽しめるオーケストラ入門としては推奨出来る1枚といえるだろう。