たまにはちゃんと(?)トランスの話でも書くことにした。
Nightmusicシリーズは、Synaesthesiaでお馴染みのThe Thrillseekersがリリースしたコンピレーションシリーズ。氏が主催するAdjusted Musicが初めてVinylでなくCD媒体でリリースした作品でもある。2005年〜2007年に全3作がリリースされており、ツアーも開催された。その名の通り夜景をモチーフにしたミックスが収録されており、同氏によるリードトラックを初めとしてジャケットに違わずこの時代のトランスにしてはかなりシックでクールな印象のトラックがまとめられている。
このシリーズ、最初はThe Thrillseekersという名前に釣られて興味を持っていたところ、Volume 1のジャケットが公開されると一瞬で刺されてしまった。今探しても見つからなかったが、当時は特設サイトも公開されていて風車が回る演出がされていたのもとてもよかった。
ところでトランスというジャンル自体は音ゲープレイヤーはもとより一時期日本でもavexがサイバートランスと銘打って大々的に売り込みをかけていたので一般層にも少なからず認知はされていたのではないかと思うが、この頃はスパソー全開でスペイシーかつエネルギッシュなダッチトランスはピークを経て、多種多様の進化を見せ始めた時代でもある。
より従来のトランスとしての持ち味を活かしジャーマントランスの流れからハードトランスやアップリフティングへシフトしていったシーンもあれば、ユーロトランスを下地にディープに陶酔出来るようなプログレッシブ方面へシフトしていった系譜もあり、本作もまたそのうちの1つ。
特にプログレッシブトランスについてはその名の通りジャンルの枠組みとしてはかなり間口が広くあまりジャンルを定義するのは意味を成さないが、当時観測していた範囲ではLost Languageレーベルの出現、特にTilt、Probspotあたりはこの系譜の発展にかなり影響を与えたのではないかと思う。そんな中このシリーズがドロップされたのは、当時はCD媒体がメインだった自分にとってはこれからのトランスはこういう路線なんだ、というのがかなり衝撃的だった記憶がある。
一方で国内の主流はサイバートランスを経てパラパラ、ハードダンスあたりと融合したとにかくアッパーでダンサブルな所謂ブチアゲトランスと呼ばれる類のものが渋谷の若者を中心に台頭してきた時代でもあり、丁度IIDXに「HHH − So Fabulous!」が収録されたのもこの頃。進化の方向性が国内外で真逆になっているのは今考えると中々面白い。
Nightmusic Volume 1
Disc 1はDJミックス、Disc 2はThe Thrillseekersのリミックス音源が収録。とはいってもDisc 2もmixedである。今作だけジャケットが夜景ではないのもあってか、後続の2作と比べても一際ディープな作風になっている。
The Thrillseekers Feat. Gina Dootson - By Your Side (Original Mix)
シリーズ恒例となっていくThe Thrillseekersによるリードトラック。このシリーズはこういうスタイルでいくんだ、というのを全力で表していて、これが刺さるならこのシリーズは買っても良い。
Above & Beyond Vs. Andy Moor - Air For Life (Original Mix)
Above & Beyondのスタジオ・アルバム「Tri-State」でも存在感のあったこのトラックも2番手で収録。
Pulser - Square One (The Thrillseekers Remix)
時代が時代なら盛り上がらなくてつまらないって一蹴されてしまいそう。今作で恐らくいちばんシックな曲。
Nightmusic Volume 2
今作は「plus365」「minus365」のミックス2枚建て。
The Thrillseekers Feat. Aruna - Waiting Here For You (Nightmusic Edit)
By Your Sideより若干キャッチーになったものの、シリーズの顔の一つして存在感を放つリードトラック。
Maor Revi - Reflect (Original mix)
この頃のミックスを聞いたことがある人なら、曲名がわからなくてもボーカルラインを聞けば「あぁーこれかぁ」となるような気がするくらいには色々なミックスで回されていたと思う。
Nightmusic Volume 3
他2作と比べるとBPMが少し高め。
The Thrillseekers feat. Fisher - The Last Time (Original mix)
リードトラックシリーズの中で一番好き。一番雰囲気がエロいと思う。
Mark Pledger vs. Matt Hardwick feat. Melinda Gareh - Fallen Tides
これもよくミックスで聞いた気がする。サイドチェインの効かせかたが控えめなはずなのにとても効果的なのが印象深くて気に入っていた。
残念ながらこのコンピ、Spotifyでは3作ともおま国なのがとても惜しい。あと、ただ単に曲を貼るのではなくそこそこちゃんとテキストを書く形式で始めてしまった自分が大層呪う羽目になった。